先生からのメッセージ
記憶の“鍵”をにぎる酵素「シアリダーゼ」の正体に迫る!
私たちの研究は、「なぜ人は記憶できるの?」「脳の中では何が起きているの?」といった素朴な疑問からスタートしました。脳は、神経細胞から別の神経細胞へと情報が伝えられることで、“感じる”“覚える”“考える”といった働きを実現しています。この神経細胞の表面には「糖鎖(とうさ)」と呼ばれる糖の鎖が存在し、脳の機能に重要な役割を果たしています。そこで注目されているのが、糖鎖の先端にある「シアル酸」と呼ばれる糖を切り離す酵素「シアリダーゼ」です。我々の研究チームでは、シアリダーゼが働いた瞬間にリアルタイムで光る蛍光センサー「BTP3-Neu5Ac」を開発しました。これにより、シアリダーゼが“いつ・どこで・どれくらい”働いているかを、直接観察することが可能になりました。このセンサーによって、神経活動に応じてシアリダーゼが瞬時に働き、神経の情報伝達や記憶に関わることが初めて明らかになったのです。
我々の研究の特徴は、学生のアイデアから始まった研究がいくつもある点が挙げられます。最先端のバイオセンサーやリアルタイムイメージングを用いながら、自分の目で生命の謎を解き明かす感動を味わえるのです。現在では、BTP3-Neu5Acを活用しながら、認知症やパーキンソン病、糖尿病、皮膚老化、筋力低下、更年期障害といった様々な疾患に対する新たな治療法の開発を進めています。また、企業と連携し、美容製品や機能性食品の開発に取り組んでいます。
順天堂大学薬学部の大きな強みは、医学部との連携が非常にスムーズであることです。薬学部で得られた研究成果が、すぐに臨床の現場に応用される環境が整っており、「人の役に立つ研究」を肌で感じながら進められることは大きな魅力です。「生命の仕組みを知りたい」「人の病気に役立つ研究をしたい」──そんな気持ちを持つ高校生の皆さんにとって、ここは夢を現実にできる場所です。順天堂大学薬学部で、私たちと一緒に“糖鎖の謎”に挑み、未来の医療を切り開く研究をしてみませんか?
BTP3-Neu5Acによる脳のイメージング(シアリダーゼが働くと緑色に光る)
次回に続く・・・